イタリアの町並み紹介と自転車事情 Vol.06

投稿者 on 11月 28, 2009

■イタリアの町並み紹介と自転車事情 Vol.04
サイクルハンターイタリア買取チームから、新鮮なイタリア事情をお届けします。

■イタリアの町並み紹介と自転車事情 Vol.06

サイクルハンターイタリア買取チームから、新鮮なイタリア事情をお届けします。

店頭2

PETTENELLA 工房 入口

今回はミラノにある「PETTENELLA」の工房よりお届けします。

1964年 第18回 東京オリンピック 自転車競技 1000mt個人スクラッチ(現在のスプリント)にて金メダル、1000mtタイムトライアルにて銀メダルを獲得した選手、Giovanni Pettenella氏が1976年にミラノに設立した工房、それがPETTENELLAです。

彼は、1943年生まれで現在66歳にも関わらず未だ顧客の為にこつこつとオーダーメイドの自転車を生産し続けています。

■PETTENELLAへ訪問

店頭1

ミラノの中心地から少し外れた住宅地にある工房に到着してドアを開けようとするとなんと鍵がかかっていました。「あらっ休み?まいったなー!」と思いきや中からガチャっと鍵を開ける音が・・・

すると中から無愛想な顔をした初老の男性が「誰?」と一言だけ。

「日本のサイクルショップにイタリアの自転車事情とかの記事を書いているものでレポートさせてもらいにきました」と応えるとすぐに無愛想な顔がちょっとだけ優しくなり、「入って。」とこれ又一言。

店内はご覧の通り、オフィス(と言っても単に机が置いてあったので勝手にそう呼んだだけですが)の至るところに色んなものが置かれていました。壁には写真が所狭しと貼られていています。

店内オフィス1

店内オフィス2

でも、少し貼り過ぎな気もしますが・・・

店内オフィス3

やはり歴史を感じさせますね。

東京オリンピック賞状

その中に東京オリンピックでメダリストになった時の賞状が別格のように飾られてました。これは話の取っ掛かりにもってこいだ!

サイクルハンター「これが東京オリンピックで金メダルと銀メダルを取られた時の賞状ですね?すごいですね。」

–Pettenella氏「まあね。」

とこれ又愛想の無い返事が・・・もう少し自慢してもいいのに・・・

店内商品置き場1

店内商品置き場2

色鮮やかなフレームがかけられています。

店内商品置き場3


■Pettenella氏との対談


サイクルハンター(以下、サ)「日本もそうであったように、今イタリアでもPettenellaさんのように手作業でフレームを初め、パーツを生産して自転車を生産される職人の方が減っていると聞きますが、それに関してPettenellaさんはどう思われますか?」

–Pettenella氏(以下、P氏)「わしは昔から一人一人のお客さんに合うオーダーメイド(SU MISURA)の自転車しか作ってこなかったけど、COLNAGOやDE ROSAみたいな企業がどんどん工業化していって、もちろん手作りもやってるけど、どんどん大きくなって今では各個人の体型とかに合わせるオーダーメイドは必要なくなってきてるんだよ。

洋服と同じでS,M,Lみたいなサイズがあればそれで事足りるようになってるだけ。だから、わしみたいなオーダーメイドしか作らない職人も必要なくなってきてるんだよ。

でも、わしは今でもお客さんに合うように1㎝、5㎜にこだわってフレームを作ってるという自負はあるけどね。それと、この仕事を継ぐ跡取りも居ないし、わしが引退したらこの工房も閉めるしかないと思っている。」

「跡継ぎのお子さんはいらっしゃらないんですか?」

–P氏「息子は居るけど、別の仕事をしているよ。」

「息子さんは自転車が好きではないんですか?」

–P氏「勿論、自転車は好きだけど、仕事にするほどじゃないって事かな。わしも別の仕事をしてもらった方が良いと思うしね。」

「先日MASIを訪問した際にAlbertoさんが、あと数年もしたらイタリアのフレーム職人は居なくなるか、ほんの数名しか残らないだろうとおっしゃっていましたが、それに対してPettenellaさんはどう思われますか?」

–P氏「残念ながらわしもその通りだと思うね。このミラノでも今やこことMASI入れても全部で3、4件しかないはずだから。それも殆どわしと同世代の職人なんで、皆同じ状況だよ。MARNATIだけは息子が継いでいるんでちょっとだけ長くもつかな。でもイタリアの自転車を生産する技術は最高なんで、COLNAGOやDE ROSAとかの大手はこれからも残っていくのは間違いないね。」

「そうなんですか、残念ですね。今、日本はイタリア同様エコロジーブームも手伝ってかなり自転車人口も増えてきています。そこで自転車と言えばやはりイタリアという事で、これからも需要があると思うんですがね。」

–P氏「そら日本は競輪というスポーツがあるくらいだから、自転車は盛んだろうよ。」

「いやいや、競輪はスポーツというよりも賭け事の一種ですからね。それとは違う意味で盛んになってきているんですよ、今は。」

–P氏「わしもそれ位は知っとるわい!」

その後Pettenella氏は奥の作業場に引っ込み、修理中の自転車の組み立てを始めたので二人の間に沈黙が流れます・・・

mini_組み立て作業2

そこで一人工房内の写真を撮ることに。

「写真を撮ってもいいですか?」

–P氏「お好きなように。」

店内作業場1

ものすごい数の工具やパーツがあります。

第9回Giro D'Italiaのマップ

第9回Giro D'Italiaのマップ

第9回Giro D’Italiaのマップも飾ってありました。

店内作業場2

店内作業場3

しかし、作業場の至るところに殺伐と工具が置いてあるので、どこに何の工具があるのか分かるのかと少々不安にも思いますが、そこは長年の経験の積み重ねか、作業に必要な工具をてきぱきと見つけて作業を続けていました。

mini_組み立て作業3

恐るべしベテラン職人・・・

店内作業場4

店内作業場5

店内商品置き場4

完成車も置いてあります。

店内商品置き場5

「ここに置いてある自転車は売り物ですか?」

–P氏「修理上がりと今から修理するやつで、持ち主がいるから売れないよ。」

その後、再度会話がなくなり沈黙が・・・

mini_組み立て作業1

Pettenella氏は寡黙に組み立て作業をしています。

「日本でも販売はされているんですか?」

–P氏「日本への販売もしているが、店舗(工房)に直接来てもらう事が条件だよ。そこで十分に話合ってお客さんに合う自転車の詳細を決める。オーダー後、約1ヶ月で完成品の出来上がり。日本に発送する事も可能だが、中には再度直接受け取りに来るお客さんもいるんだ。」

「なるほど。ちなみに価格はどれくらいですか?」

–P氏「プライスは勿論使用するパーツによって異なるが、因みにこれ(写っている現在組み立て中の自転車)は、4,200ユーロだよ。」

mini_組み立て中自転車

「そうなんですか。」と途中まで組み上がった自転車を眺めていると・・・最後に恐れていたとどめの一言が!

–P氏「他に何か用事ある?」

「最後にPettenellaさんの写真を撮らせて下さい!」

お願いすると写真の通り、ちゃんとポーズを決めてニコッと笑ってくれました。

Giovanni Pettenella氏

Giovanni Pettenella氏

そこはやっぱりイタリア人、さすがです。

気をよくしたのか、PETTENELLAのロゴのシールを2枚いただきました。

シール

その後お礼を言って工房を出た途端、又ドアの鍵を閉める音が・・・これは、知ってる人しか来ないよなー・・・

殺伐とした雰囲気の工房、使い込まれた数々の工具。そんな中で職人さんが丹念込めて一台一台丁寧に組み上げていく。そうやって作り上げられる自転車も年々減っていくのはどこか淋しいものがあります。

今回ご協力頂いたのは、まさに職人さんを絵に描いたような寡黙な方、でもやっぱりイタリア人の愛嬌のあるPettenellaさんでした。

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今回はここまで。

また次回レポートをお楽しみに!

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■取材協力

Giovanni Pettenella氏

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追記:(2010年5月6日)

非常に残念なご報告です。

Vigna氏(第13回レポート参照)から伺って初めて知ったのですが、今回レポートしたフレーム工房 ‘Pettenella’のGiovanni “Vanni” Pettenella氏が今年2月20日に他界されたそうです。

伺った時には無愛想でもあんなにお元気そうだったのに、信じられない気持ちで一杯です。

心よりご冥福をお祈り致します。

合掌

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